kdenologue

たまに何か作ります。

DMM.makeに3Dプリント発注してギアボックスを作ったので質感とか寸法精度とかレポートする

本業(学生)のほうでちょっとしたメカを設計していて,いろいろ考えたけど「DMM.make使ったこと無いし使ってみたいな~どうせ作るものもほとんど一品モノだしガチ量産とかスケール性云々」ということで,もともとはアルミ板金的な何かとスペーサー的なものとを組み合わせて・・・みたいな構成だったものを一体化して3Dプリントできるようにし,DMM.makeに発注してみた.寸法とか見た目とかレポートします.

材質

使った材質は,「MJF PG12GB(ナチュラル)」と「ナイロン(ナチュラル)」.どちらも低価格,比較的エンジニアリングプラスチックに近い素材とのこと.

MJFは敷き詰められたプラスチックの粒子(ペレット)にインクジェットプリンター見たく薬剤を吹き付け,加熱すると薬剤のある部分だけプラスチックが溶けて固まるのを利用して造形する方法.納期は7~10日. 機材はこれ.

精度は ±0.20mm ちなみにペレットの粒子サイズは60um,印刷は1200dp(i≒20umスポット?)らしい. こういうところにも同じようなデータがある.

www.materialise.com

ナイロンもよく似ていて,ペレットに対してレーザーを当てて焼き固める方式.納期は3~10日.DMM.makeでは以下の機種を置いているらしい.どれで造形されるかはわからないとか.

精度は ±0.30mm かつ 長軸方向に±0.15%

これら両方の造形に言えることは,サポート材が不要なこと.FDMとかでは不可能に近い中空構造でも造形できる.はず.

どちらも値段・強度・精度がよさそう.今回はギアボックスということで,これらの素材を使ってみた.色はどうでもいいのでナイロンは未着色.MJFはGB(ガラスが混じっていて強度が増すらしい)のやはり未着色.

日程感

  • [8/5] 試しに適当なサイズでDMM.makeにデータを投げてみたら案外安かったので一回試してみるかーという気分になる
  • [8/8] 板金部分やスペーサーで別れていたパーツをざっくりと合成し,価格見積りを出してみる→一式で3000円(x2種類)くらいかな~ (ちなみに50個用意する予定である,まあ予算はあるしいいかな・・・みたいな)
  • [8/9] もう少しちゃんと造形用にデータを整えた
  • [8/11] かみ合わせについて再度調査し,ある程度公差を考慮したサイズ感に微修正
    • 夕方に発注 ちなみに日曜日
  • [8/12] 午前11時半頃 「データのここらへん薄すぎて壊れるかもだけど大丈夫?」 とメールが届く
    • すんませんと言いながら修正してその日の13時頃にデータ再提出
    • 同日15時半頃,データの再チェック結果が帰ってくる 一箇所チェック漏れがあったけどまあいいですとして発注確定
      • 2時間でチェックが帰ってくるのすごいなーと思いつつ,これくらい造形素材確定時に自動でチェック走らせてくれないかなーとか思いつつ
        • そもそもFusion360に厚みチェックがないのが悪い
  • [8/13] 17時頃 ナイロンのほうの造形が始まる
  • [8/14] 9時頃 MJFのほうの造形が始まる
  • [8/19] 発送連絡がくる
    • ちなみに発送元は石川県 加賀市 DMM.comの加賀拠点ですね
    • 複数素材の同時注文は全部製造が仕上がってからということらしいので,多分ナイロンだけで注文してたらちょっと早かったかも.
  • [8/20] 昼過ぎに到着
    • データは4パーツひとまとめにした状態×2マテリアルで合計8個の部品が存在していて,梱包は部品の種類ごとに(同マテリアル別形状)4袋に分かれてきた.丁寧.

というわけで今回は注文確定から発送連絡まで7日.思い立ってから入手まで20日弱でした. 研究室とかにも3Dプリンタはあるけど(私物はもってない),さてさて20日待つ+数千円払う価値がある造形結果になったのでしょうか.

素材感

どちらも積層感はかなり少ない.また,ペレットを固めるタイプなので梨地仕上がりに近い.

※以降MJFはMJF PG12GB(ナチュラル),ナイロンはナイロン(ナチュラル)のことをさします

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MJF

MJFの見た目はアルカンターラに近いかも.さわり心地もこころなしかしっとりしている.

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ナイロン

目の細かい角砂糖かのよう.MJFより積層痕が目立たない.

細かい部分チェック

とりあえず画像を何枚か貼ってみる.

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Φ3.2の穴@ナイロン ちょっと潰れてる

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内径2.2,外形4.0の円柱 きれいに出ている@MJF

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約15cmの棒 積層方向は画像前後方向

1辺3.2mmの六角状の穴に対してM3用ナットは・・・

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MJFは気持ちよく入る

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ナイロンは正直きつい(寸法は後ほど)

M2用のネジ穴がナイロンだと一個貫通してない.

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オイオイオイ

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MJFは問題なし

寸法を見てみる

筆者は機械設計全くの未経験なので公差とか図り方とか全くの適当なのであしからず.粉っぽいので,多分ノギスで強く噛めば値は多少変わります.

数字は全部mm,左から 「CAD上の値/ナイロンでの実測/MJFでの実測」.

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補足や所感まとめ

※この記事ではMJFはMJF PG12GB(ナチュラル),ナイロンはナイロン(ナチュラル)のことをさしています(再掲)

  • 全体的にナイロンは角が取れていて柔らかい仕上がり.MJFはカドも立っている.
    • ただ,MJFにはかなり鋭い角とそうでない角の両方がある.これはなんでかよくわからない.
  • 寸法は全体的にみてMJFのほうが良好と言えそう.
  • 特にナイロンは積層方向の誤差が大きい. ±0.30mm かつ 長軸方向に±0.15% と但し書きがついているだけある
    • 逆に言えば寸法を出したい方向と造形平面を考慮する必要がありそう.
  • M3,M2ネジはΦ3.2,Φ2.2で開けておくとMJFならおよそいける.ナイロンだとつらいことがあるかも.
    • これも造形方向によるが・・・.
    • MJFは硬いので,ネジを手で押し込むのはつらいと思う.ドライバーを使えば,Φ1.9指定の穴にM2ネジを突っ込むことはできた.
  • M4,3,2用のナット穴は1辺が4.1, 3.2, 2.4 の六角形で掘った.
    • MJFでは大体遊びがちょっとある程度で問題なし.ナイロンは逆さまにしてもナットが落ちてこないくらいの遊び.どちらも4箇所(少し深めの位置に開けたやつ)だけ他のよりちょっときつめだった.
      • 個人的にはここの値は詰めないかな~ 場合によってはM3ナットを1辺3.3の六角形にするかも程度..
  • 円柱でのかみ合わせは,ナイロンだと0.1mm直径を変えていても場合によってはちょっときつめになる (積層方向に伸びがち)
    • MJFだと問題なくはいる,むしろ四隅を0.1mmの直径差の円柱でかみ合わせをしているとちょっと遊びがあるレベル
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      • 今回はΦa,Φb =(4.1, 4.0)と(3.0, 2.9) の二種類を使っている.
        • 何言ってるかわからないかもだけどこれは許して.

あんまりこういう採寸データを公開してくれている人がいないので(造形物の秘匿性もあるでしょう),思い切ってたくさん公開してみました.あくまでも自分の振り返り用途がメインですが.

有用だなー発注に役立ったなーコスト浮いたかもなーと思った方は,是非僕のbooth.pmから投げ銭してもらえると助かります.連絡いただければ,上に張った画像+αの高解像度版を渡すことも考えます.

sporadic-e.booth.pm

こういう記事に対する投げ銭機能,noteとかあったなとか思いつつ.