はんだごてPinecilのコテ先温度を色々測ってみた
この間PinecilというUSB Type-C入力対応のはんだごてを購入した。
したはいいが、先端部の温度がちょっと怪しい。なので、かんたんで良いので測ってみることにした。
前フリ
一番ローコストなのは手持ちのデジタルマルチメーターに付属していたK型熱電対プローブをコテ先に頑張って当てる方法である。
しかし、コテ先への当たり方が不安定なので温度が安定しない。比較手法としては心許ない。
そこで、市販のコテ先温度計を調べてみると、例えばHAKKO FG-100などがヒットする。そして2万円とかする。…製造現場でもないのに流石に温度計に2万は出せない。
Amazon | 白光 こて先温度計 FG100 | ハンダゴテパーツ https://www.amazon.co.jp/dp/B004K0N1AW
ふっと関連商品を見てみると、同じHAKKOの温度センサーを使った中華系の製品が数千円で見つかる。更にAliexpressとかにいくとFG-100っぽい何かが千円台である。なんということだ…
ところで、この温度センサーで使われているのはHAKKO 191-212という3又の電極なのだが、どうやらこれ自体はただのK型熱電対なんだそうだ。
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じゃこれでいいじゃん。これを手持ちの熱電対対応のDMMに繋げばいいじゃん。
ちなみに同じようにHAKKOのセンサを使ったコテ先温度計がスイッチサイエンスから販売されている。これも、よく見るとMAX31855KというK型熱電対向けのICが載っている。
作成
出来上がったのがこちらです。
my new ...? pic.twitter.com/0mhQkv36qh
— かでん (@2_sac) 2021年3月16日
まあ細かいことを考えなければ、先の三叉電極をいい感じに固定さえ出来ればいい。スイッチサイエンスのはM2.6ネジを使っているらしいが、いい感じのが手持ちになかったのでM2で代用。M3は入らないっぽい。固定用の3本目は、多少テンションが変えられるように穴を気持ちスリット状に開けている。
で、ここに対してテスターからワニ口を伸ばしてあげれば無事測定可能となる。固定しているネジやらそこにつなげる線の温度が極端に上昇したり偏ったりすると誤差が出るのだろうけど、そこはまあ運用でカバーみたいな感じで。それに、絶対温度を測定するならまだしもそれぞれの傾向がつかめれば・・・という用途であれば十分でしょう。多分。
測定
手持ちのDMMはOWON B35。Bluetooth SPPでデータをPCに送ることが出来るので、PC側でTs Digital Multi Meter Viewerでログを取る。
Pinecilに付属していたB型で、ターゲット温度を250℃にしたときの温度上昇がこんな感じ。電源は65W PDで、t=10で電源を入れた。25秒で最大温度程度になっていることがわかる・・・が、設定温度を大きく超えて320℃くらいになっている。ふむー
記事中で気合で普通のK型熱電対当ててた時とあんまりかわらないな,(OWONのB35 DMMを信じるなら)250℃設定で320~330℃くらい出てる.#pinecil https://t.co/9QIm6DX841 pic.twitter.com/01fZLL3h7t
— かでん (@2_sac) 2021年3月16日
こっちはPX-201。コテ先は2C型で、設定温度は350℃。同じくt=10で電源を入れて、だいたい60秒くらいかけて最大温度約340℃に到達する。いい感じっぽい。
PX-201は加熱に時間がかかるけど,ちゃんとダイヤルでの設定温度350℃に近い値になる pic.twitter.com/pZINhKTaFn
— かでん (@2_sac) 2021年3月16日
というわけで、なるほどPinecilの設定温度は結構ずれているのだなぁ、ということが改めて確かめられた。
コテ先による比較
これで終わるのも味気ないので、Pinecil用のコテ先が複数届いたこともあるのでそれぞれで比較してみる。
一番使いそうなTS-BC2で室温キャリブレーションした状態で比較するとする。つまり前節の条件(B2でのキャリブレーション)とは異なる。各コテ先ごとに室温キャリブレーションは面倒なのでしない。
TS-BC2
設定330℃に対して制御中の表示は335くらいだったので、ズレは+25℃ってところかな。
TS-C1
設定330℃に対して制御中は340~350℃くらい。それでいて先端部は310℃くらい。細いのが現れてるって感じかな。
TS-JL02
更に細いやつ。測定ガバなので参考程度に。表示は330℃くらいだが先端部は315℃くらい。
TS-K
ナイフ。刃渡り?の真ん中で測定。立ち上がりが遅め。表示側で370℃とか見えたので、なんかしら温度が高く勘違いされて出力が弱まったとか? でも温度高いと出力は0になるはずなのでいまいちしっくりくる説明が思いつかない。2分くらいかけると340℃と大体目標値に到達した。
TS-C4
ぶっといやつ。365℃とちょっと高め。
TS-I
先細りの円錐。320℃くらい。
TS-D24
マイナスドライバーみたいなやつ。最大350℃強。表示は340℃くらい。
TS-B2
改めて付属品のTS-B2を取り付けて測定。最大380℃、やっぱりこいつなんかおかしいわ。
TS-B2(2)
Aliexpressで買った方のTS-B2。これは逆にコテ側でセンスしている温度が何故か早々に370℃とかに到達してしまい出力が上がらない。結果コテ先温度が上がらないという事態に。TS-Kの挙動を顕著にした感じか。
加熱時のコテ側の温度表示を見てみると、260℃~320℃が一瞬でジャンプしているように見えた。このあたりでなんかおかしくなっていそう。
最後、改めてBC2の温度を測定してみると最初の傾向と同じだったので、少なくとも今短時間でコテが壊れたということはなさそうであった。
まとめ
コテ | 先端温度 ℃ |
---|---|
TS-B2 | 380 |
TS-C4 | 365 |
TS-BC2 | 360 |
TS-D24 | 355 |
TS-K | 340 |
TS-I | 320 |
TS-JL02 | 315 |
TS-C1 | 310 |
TS-B2(2) | 280 |
かな~~~~~り雑な比較だが、(あくまでBC2で室温キャリブレーションした場合を基準に)大体目標温度-10℃~+30℃くらいの範囲で収まっていることが判明した。加えて、コテ先が細いやつは温度低め、太いやつは高めに出ているようにも見える。通常サイズでは全体的に高めに出ているので、20℃くらい低めで設定しておけば(自分の固体としては)いい塩梅ということにしよう。
温度の立ち上がりの違いは、太さ・・・は実はあまり関係ないのではないかという気がしている。コテ先先端1cm以外の部分の大きさに大差はない。どちらかというとフィードバックによる出力の変動のほうが要因になっているような気がするのだが、出力変化はあくまで目視で雰囲気だけ見ていただけなのでなんとも言えない。コテの表示画面と温度変化をセットで記録してやっと議論が出来ると思うが、流石にそこまでやる気にはならない。いずれにせよPX-201と同等かそれ以上の速さだし。
そして、付属のTS-B2、Aliexpressで買ったTS-B2どちらも何かがおかしいような挙動であった。もともとB2型を使うつもりはほぼ無いのでまあさほど問題ないが、2本ともおかしいというのは少々気になる。 いずれにせよ、買った人は普通の熱電対プローブでもいいので温度を確認するのと、コテでセンスしている温度の表示がなめらかに変化しているかを確認したほうが良いんじゃないかな、という所感。
繰り返しになるけれども、ここで書かれているのはあくまで雑な比較。温度が正確なはんだごてがほしい?HAKKO FX-100を買いましょう。
宣伝。投げ銭先。